共謀罪

共謀罪についての参考サイト


共謀罪(キョウボウザイ)ってなんだ?
共謀罪ってなんだ?
共謀罪ブログ
共謀罪反対 THE INCIDENTS (Alternative Version)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/complicity_about_qa.html
http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-May/006724.html


ここしばらく体調を崩していたこともあって、文章を書くことができずにいた。しかし、今週が山場とも言われている共謀罪については、一言でも触れておく必要があるだろう*1


共謀罪について直接触れる前に、まずはこの映像を見て欲しい。(要 RealPlayer


http://www.labornetjp.org/Video/ram?file=2006/20060430prec


この映像は、2006年4月30日に起きた原宿警察によるデモ弾圧の光景を映し出している*2。この映像から浮かび上がってくる光景に、何か得体の知れない不安感を抱く人も少なくはないだろう。しかし、ひょっとしたら、この映像を見ても何も感じない人もいるのかもしれない。所詮は他人事じゃあないか、、と。そしてむしろ、デモをしている人々に反感を抱く人さえいるのかもしれない。彼らに問題があったんでしょ、と素朴に思う人もいるだろう。だがそのように感じる人は、もう一度この映像を見直してみて欲しい。そして、警察側の用意周到ぶりを、躊躇の無い動きを、良く見て欲しい。そこからは、警察は「最初っからそのつもりだったのだ」、という事実が、また、具体的な事案・理由は後付けでも良かったのだ、という事実が浮かびあがってくる。これは、権力によるあからさまな暴力行使の光景なのだ。僕は、、この光景に強い憤りと、慄然とした感覚を禁じ得ない。


この光景から浮かんでくる、得体の知れない不安感、慄然とした感覚、、その先に見えてくるものは、こういうことだろう --- 国家権力というものは、共謀罪なんて無くとも、その気になればあからさまな暴力を行使できるし、あからさまな不正を行うこともできるのだ、と。そのような意味では、仮に共謀罪の成立を阻止できたとしても状況はそれほど変わらない、と言えるかもしれない。現況を見てみるならば、16歳以上の外国人から強制的に生体情報を採取する入管法改定が、今日にも成立する見込みとなっているし、多くの問題をはらんだ教育基本法改定も、昨日審議入りしている。今の社会状況は、さながらダムが決壊する直前の様相にも似ていて、問題は共謀罪ひとつとは限らない。しかし、それらの流れの中でも特に共謀罪の成立の可否は、やはり、この社会のひとつの大きな分岐点となるだろう。なぜなら共謀罪とは、人と人とのつながりを証拠として、人と人とのつながりの有り様を、罪に問うものだからである。先の光景を思い浮かべてみよう。人と人とのつながりを罪に問えるということが、どのような帰結をもたらすのか。それは先の光景が示唆している。あの、あからさまで理不尽な暴力の対象として、我々の発話や心情といったものが浮上してくるのだ。そして、この日本という社会において、多くの人々がどれほど自主規制的に日々を過ごしているかを思い浮かべるならば、共謀罪というものは何よりも、人々をその権力行使の中に組み込むことを容易にするものなのだ、と言えるだろう。


ここでひとつ、立ち止まって考えてみたい。暴力的な権力を、暴力的な権力たらしめているものは一体なんであるのか。そして、このような流れを阻止し得るものは、一体なんであるのか、と。それは、やや乱暴に、そして素朴に言ってしまえば、社会の構成員の質の総和、その結果に過ぎない。もちろん社会普遍の問題を、個々人の責に帰するような発想は論外だろう。にもかかわらず、この「社会の構成員の質の総和に過ぎない」という視点は、無視できない根元的な重要性を持っている。そしてこの視点からは、ひとりひとりの人間が「このような状況は認めない」と思うこと、ただ思うことだけでも --- それどころか無意識裡に「嫌だ」と感じているということだけでも --- 社会の帰趨を決する潜在的な力を持ち得る、という事実を予感させる*3。しかし仮りに歴史がそのように動いていたとしても、多くの場合、それは自覚され得ない。そして自覚され得ないということは、意識裡に定着することもなく同じ過ちをくり返していくということでもある。意識的な営みがなければ、仮りに社会の帰趨を決したとしても、それが総和の結果として定着することはないのだ。しかし、そうではあるけれども、少なくともこうは言えるだろう。思いや気分だけでもそのような潜在的な力を持ちえるのだから、さしあたって、ひとりの人間が発言するという行為は、それほどバカにしたもんじゃない、と。


これらのことから、僕は最低限、このように言っておこうと思う。「共謀罪は廃案にすべきだし、共謀罪に反対する人々に連帯します」、と。

*1:正直に言えば、直前になってから初めて触れるのは、ややアリバイ的で恥ずかしいのだけれど。

*2:このデモ弾圧の詳細については、http://mayday2006.jugem.jp/ に詳しい。

*3:たとえば、http://d.hatena.ne.jp/sarutora/20060430/p1