不思議なこと

総選挙の投票日を明日に控えて。


不思議なこともあるものだ、と思う。
各種世論調査の結果では、自民圧勝・単独で安定多数の勢い、なのだそうだ。


郵政民営化が実現すれば、政界から腐敗が一掃される。
郵政民営化が実現すれば、役人の天下りも無くなる。
郵政民営化が実現すれば、国の借金も消えてなくなる。
郵政民営化が実現すれば、景気も良くなる。
郵政民営化が実現すれば、失業率も改善される。
郵政民営化が実現すれば、僕やあなたの収入も増える。
郵政民営化が実現すれば、年金だって安心。
郵政民営化が実現すれば、医療も安心。
郵政民営化が実現すれば、小子化も改善。
郵政民営化が実現すれば、韓国や中国とも仲良くなれる。
郵政民営化が実現すれば、拉致被害者だって帰ってくる。
郵政民営化が実現すれば、イラクも平和になる。
郵政民営化が実現すれば、テロにも狙われなくなる。
郵政民営化が実現すれば、常任理事国にだってなれる。
郵政民営化が実現すれば、みんな幸せ。


郵政民営化が実現すれば、小泉政権4年間の停滞や負債が払拭されて、ユートピアが訪れる。


本当に、多くの人がそんな風に思っているのだろうか。


社会に暮らす、僕達一人一人は --- 勝ち組と呼ばれる人であろうと、そうではなく、貧苦に喘いでいる人であろうと、生活の中でのささやかな喜びや、他人から見れば、取るに足らない個人的な満足を大切にして、そして、それらを糧として生きている。(それは、とても素敵なことだ!)そして、自分に見える範囲の中で、自分の理解している範囲の中で、様々な決断を下して、その延長線上に、今の社会がある。


不思議なことだ、と思う。
僕達はこの日常を大切にして、その上で判断を下しているはずなのに。その判断が、実際には自分達のそのささやかな喜びを奪っていくことにつながり得るのだとしたら。それはとても不思議なことであるし、残酷なことだよな、って思う。


時々、戦中やその直前の生活について、想像してみることがある。


現在の僕達から見れば、それは歴史的な出来事だ、歴史的な時系列の中に存在している出来事だ、と感じるのだけれど。しかし、当時の日常の中で、「今、自分達は歴史的な時間軸の中にいるんだ」なんて考えていた人は、きっとほとんどいなかったんだろうな、って。きっと多くの日本人は、そんな中でもささやかな日常を、淡々と生きていたんだろう。*1


そして、そういった日常での判断の積み重ねが、当時の状況を生み出していったのだとしたら。

不思議なことと言えば。

そういえば、こんなことがあったことを思い出した。


「郵政改革の是非について、国民に信を問う」と言っている、小泉純一郎という人は、かつて、「世論がすべて正しいとは思っていない。」と発言した。


いったいぜんたい、いつ、彼は心変りしたのだろうか。
彼を支持する人々は、「信念を貫くところに惹かれる」と言っていたりするのだけれど。


まったく、不思議なことだ。

*1:戦争末期でも、おそらく、空爆の対象とはならないような田舎などはそうだったのではないだろうか。