2005年6月25日 早朝
山道を歩いている。
皆で食事をするために、山道の先にあるレストランに僕が先に行き、予約をするつもりなのだ。
道は肩幅程度しかなく、左手は切り立った崖となっている。油断をすれば、崖に転落してしまうだろう。慎重に、しかし急いで、進んでいく。
しばらく進むと、前方に、杖をついた若い盲目の女性が歩いていた。今にも崖から落ちそうで、危なっかしい。
彼女が、崖道のカーブにさしかかる。
僕は後ろから、「もう少し右です。」「止まって!」等、声をかけて彼女を誘導した。
彼女は無事、落ちずにカーブをまがる事ができたが、その先で、何かにぶつかって尻餅をついてしまう。
ぶつかったものは、30センチほどの大きさの岩だった。彼女は、その岩を引き摺りながら退けると、カーブの角にその岩を置き、その岩に赤いマジックペンで「崖になっています。気を付けましょう」といった内容を書いた。
その岩は、きっと、これから通る人達のための標識となるだろう。
僕は、「これから先は危険です。僕が手をひいて進みましょうか?」と彼女に声をかけた。
しかし、彼女は「大丈夫です」と、きっぱりと申し出を断った。
僕は彼女の言葉を信頼し、後ろから見守ることにするのだった。